北米プレミア上映でスタンディングオベーションが起こったり、初期レビューで絶賛の声が上がったのは、お客さんが熱心なゴジラファンだったからと思っていたのですが、ここ数日向こうのソーシャルメディアの反応を翻訳しながらチェックしているとそれが一般層にも波及し「人間ドラマに感動した初めての怪獣映画」「素晴らしい映像と音響による本物の映画体験」「IMAXや4Dで観る価値のある作品」「今年のベストムービー」といった熱いコメントが並ぶ、誇大広告ではなく本当に「全米ゴジ泣き大ヒット」となりつつある『ゴジラ-1.0』。
Daily #BoxOffice Top 7 for Monday, December 4, 2023
— BoxOfficeReport.com (@BORReport) 2023年12月5日
1. #GodzillaMinusOne - $1.23M
2. #TheHungerGames - $1.20M
3. #Animal - $779K
4. #Napoleon - $685K
5. #TheShift - $550K
6. #Wish - $389K
7. #TrollsBandTogether - $373K pic.twitter.com/Vi4UhJITYi
文字通り口コミ効果で確実に動員を増やしており、遂に12月4日のデイリーランキングで第1位を獲得。
「たった1日じゃん」と思うかもしれないが、これが原語音声・字幕上映の外国映画というのが快挙であり、アメリカではそもそも非英語作品を映画館で観る習慣が無く、観ても基本的に吹き替えでの鑑賞ということからも、このヒットの異例さが分かるはず。
あまりに好評かつ「劇場でリピートしてこの映画を応援しよう!!」というファンの声援に後押しされ、短期間で終了するはずだった上映が延長されるなど数字はまだまだ伸びていきそう。
前回の記事で軽くどういった点が海外ニキ・ネキに支持されているか触れたが、要約すると
「シンプルイズベスト」
または
「こういうのでいいんだよ」
といった感じ。
近年ハリウッドの数億ドル規模の作品が軒並み製作費を回収できず、観客からもそっぽを向かれる事態に陥る中で現れたこの『ゴジラ-1.0』の古き良きハリウッド映画然としたスペクタクル、ともすれば古臭くもある純朴な人間ドラマ、そして何より映画体験に重きを置いた観客を喜ばせる活劇に特化した構成に、映画の本場と言われる地のオーディエンスが熱狂しているのだから本当に凄い。
マーベルやDCブランドで乱造される映画に対する観客の「スーパーヒーロー疲れ」。
『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』など偉大なIPの新作がファンの期待に応える事が出来ないなど、積もり積もった自国映画に対する不満を70年の歴史を持つ日本発の「ゴジラ」が痛快に打ち破ったことに衝撃と称賛が押し寄せているといった感じ。
「怪獣(モンスター)映画界の『ダークナイト』」
「『トップガン マーヴェリック』の興奮再来」
「『オッペンハイマー』を補完する傑作」
など、映画好きとしては堪らない言葉が並んでニヤニヤが止まらない。
That's right. #GodzillaMinusOne is CERTIFIED FRESH at 97% on @RottenTomatoes! Now Playing in theatres nationwide. Get tickets for TONIGHT: https://t.co/hskwqnHTg3 pic.twitter.com/W0BjORw5TH
— GODZILLA.OFFICIAL (@Godzilla_Toho) 2023年12月6日
米国で主流の映画満足度の出口調査では「A」を獲得し、有名な映画サイト「Rotten Tomatoes」や「IMDb」でも高評価を維持するなど、真面目に日本よりウケていると言っても過言ではない。
この辺りの反響の差に関しては、日本人的には出演陣が売れっ子過ぎて他作品の印象がノイズとなったり(例として朝ドラと被った神木・浜辺コンビ)、『永遠の0』や『アルキメデスの大戦』など過去の山崎貴監督作品から方向性がある程度予想できたのに対し、言ってしまえばスタッフ・キャスト共に外国人的には無名なので何の先入観も無く純粋な気持ちで作品と向き合えたのも大きいのではないかと思う。
『ゴジラ-1.0』がハリウッド的には低予算である1500万ドルで制作されたことを引き合いに、巨額の費用に見合わない愚作しか生み出さない自国の映画会社を叩く手段に使われ始めているのは少し気になるが、本作の「観客の心を掴む方法」が今後間違いなく分析されハリウッド映画制作に影響を与えていくのは確実なうえ、米国市場での外国語映画の門を開いたという意味でもターニングポイントとなるかもしれないという事実が本当に誇らしくなります。
今後更にブラジルやイギリスでの公開も控えており、この熱狂が世界にどこまで広がっていくか楽しみです。