いまここにあるもの

カメラとか自転車とかアニメとか映画なんかが好きなオタクが管理する闇鍋ブログです。調子が悪いと文章が破綻します。旧ブログはこちらに移管しました→https://otaku4160.hatenablog.com

『哭声/コクソン』(2016年) -★★★☆☆-

ポスター画像

感情論を抜きにすれば、一昔前の日本映画のような野心的なタイトルが多い近年の韓国映画界。
この『コクソン』もそんな一作で、鈍器で頭をガツンと殴られるようなパワフルさと、見るものを煙に巻き混乱させる難解さを併せ持った怪作である。

韓国の片田町で続発する猟奇殺人事件。
温厚だった人々が家族を次々と惨殺し謎の発疹でやがて死に至る。
山で暮らす「よそ者」の日本人に疑いの目が向けられる中、主人公の愛娘の身にも異変が起こり始める…。

序盤はサイコスリラーな臭いを漂わせつつ、コントのような掛け合いと描写で笑いを誘ったかと思えば、エクソシストゾンビ映画要素までぶち込む闇鍋具合に混乱必至。
怪しい日本人に、胡散臭い祈祷師、浮世離れした謎の女が、娘を救うために奔走する主人公を惑わせる。

誰が敵で誰が味方なのか?。
何が真実で何が嘘なのか?。
人は何を根拠に相手を疑い、何を基準に信じるのか?。

冒頭で新約聖書の一節を引用するなど宗教的な要素も多いのだが、ラストでその一節をあの見た目になったあの人物があの職業の人物に諭すというのが皮肉というか、逆説的で面白い。

重苦しい空気が漂う中盤以降は観ていて本当に疲れるし、カタルシスなど微塵も感じさせない結末は疑問符とモヤモヤが残るので、分かり易さやハッピーエンドを望む層には間違っても勧められない。

しかしここまで娯楽性とは無縁の作品が本国では700万人を動員する大ヒットを記録したというのだから驚きである。
こういう尖った作品が受け入れられる土壌、評価する観客がいるというのは素直に畏敬の念を抱く。

それにしても異国の地で文字通り裸一貫で熱演し、現地の賞を総なめにした國村隼さんの存在感は半端なかった。