いまここにあるもの

カメラとか自転車とかアニメとか映画なんかが好きなオタクが管理する闇鍋ブログです。調子が悪いと文章が破綻します。旧ブログはこちらに移管しました→https://otaku4160.hatenablog.com

『ザ・クリエイター/創造者』(2023年) -★★★☆☆-

低予算映画『モンスターズ』を切っ掛けに『GODZILLA』に大抜擢され、その後『ローグ・ワン』と有名タイトルを立て続けに手掛けたギャレス・エドワーズ監督が原点に立ち返り制作したオリジナルSFムービー『ザ・クリエイター/創造者』を観る。

AIがロサンゼルスに核爆弾を投下し100万人の市民の命を奪った事から彼等を敵視する西洋諸国と、共存共栄を謳う東洋諸国が紛争状態に陥った近未来。
両者のパワーバランスを崩す「恐るべき兵器」の破壊を命じられた米国のエージェントは敵の基地に潜入するが、そこに居たのは「無垢な心を持つ少女型のロボット」だった…。

率直な感想としては、ギャレス・エドワーズ監督の新作というより、ニール・ブロムカンプ作品(『第9地区』『エリジウム』『チャッピー』)を混ぜ合わせてゴア表現を取り除いて上品に仕上げた感じ。

既に公開済みの本国では不発気味との事だが、本作は『ターミネーター』を筆頭に人工知能やロボットを人類の「敵」として描く米国マインドより、むしろ『鉄腕アトム』など「友」として扱ってきた日本的な思想で作られており、間接的にベトナム戦争対テロ戦争の失態を再批判されるので向こうの観客にウケが悪いのも頷ける。

翻って日本人的にはどうかと言えば謎の日本語推しやゲリラロケをしたらしい渋谷のスクランブル交差点といった風景。
そしてケン・ワタナベの存在など親近感が湧くこと請け合い。
(中華資本が入ってないので露骨な中国ヨイショが無いのも良い)

今なお相容れない者を排除する戦争を世界各地で繰り返す人類の愚かさを、議論の的となっているAIを通じて風刺する物語は実にタイムリーなのだが、「人」を「機械」に置き換えただけで展開そのものに目新しさはなく、何より「命」をテーマにしている割に登場人物の「命」が軽く扱われ、その犠牲に思いを馳せないままトントン拍子に話が進んでいく展開には首をかしげるばかり。
(ネタバレになるので詳細は書かないが電子戦で人間に負けてるAIや、米国の軍事行動全般などツッコミどころが多過ぎる)

SONYの民生用シネマカメラや自然光を用いて撮影するなど製作費は同ジャンルのハリウッド映画の半分以下でありながら、ILMが担当した視覚効果を含む映像の完成度は驚異的で「どうやって撮影したの?」と思うようなカットも山のようにあって素晴らしい。

ビジュアル面に限って言えばアメコミやリメイク、続編ものに頼り切りな近年のハリウッド映画の中ではぶっちぎりで独創的かつ野心的なのだが、それに対して肝心要のドラマ部分が凡庸で深いメッセージ性や余韻が乏しかったのがただただ残念でならなかった。