『ガタカ』や『TIME/タイム』などSF作品に定評のあるアンドリュー・ニコル監督の『ANON アノン』をアマプラで鑑賞。
人間の個人情報や視覚データ、果ては思い出まで閲覧できるようになった近未来。
プライバシーの消失と引き換えに犯罪行為は即座に暴かれ冤罪も無くなった社会で、犯人がその痕跡を一切残さない不可解な連続殺人事件が発生する…。
とにかくこの作品、引用から始まる導入部を含め確信犯としか思えないレベルで『攻殻機動隊』で驚かされた。
脳内通信で現場検証や捜査会議をする刑事たちが「公安9課」なら、相手の目を盗んだり記憶をリアルタイムで上書きする犯人はまさに「笑い男」。
終始仏頂面のクライヴ・オーウェンは『イノセンス』の時のバトーだし、アマンダ・サイフリッド演じる謎の女はどこか少佐的ですらある。
実際問題アンドリュー・ニコルが攻殻ファンかは分からないが、少なくとも私は鳴かず飛ばずだったハリウッド版に憤慨し「俺ならもっと上手く作れるわ!!」と勢いに任せて作った二次創作としか思えなかった。
銀残し風のクールな映像などビジュアル面は悪くは無いのだが、メッセージ性などは同監督の過去作ほどの深みは無く、登場人物の掘り下げやオチも弱いため、良くも悪くもドラマシリーズの中の1エピソードのような作品でした。