いまここにあるもの

カメラとか自転車とかアニメとか映画なんかが好きなオタクが管理する闇鍋ブログです。調子が悪いと文章が破綻します。旧ブログはこちらに移管しました→https://otaku4160.hatenablog.com

『ウインド・リバー』(2018年) -★★★☆☆-

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ネトフリ作品が外ればっかなので『ボーダーライン』『最後の追跡』など賞レースに絡む作品の脚本を多数手掛け俳優としても活動するテイラー・シェリダン初監督作品にして、第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞した『ウインド・リバー』を口直しに鑑賞。

『ボーダーライン』が物語を通して麻薬戦争の実情を浮き彫りにしたのに対し、本作は同様のアプローチでネイティブアメリカンが追い遣られた極寒の大地の現実をまざまざと映し出す。

雪山で発見された少女の変死体。
事件性があるにもかかわらずFBIから派遣されたのは経験の浅い捜査官1人という事実から、それとなくこの地で起こる事件に対する国の無関心さを匂わせる。

土地面積に対して少なすぎる警察官。
他殺と断定されないと増員されない人員。
軽視されるネイティブアメリカンの人々。

エリザベス・オルセン演じる捜査官が見知らぬ土地でカルチャーショックを受けながら事件の真相に近付いていく構成も『ボーダーライン』を彷彿とさせますが、本作の肝は残された遺族の心情、そして被害者が最後に見せた生きようとする意志であり、同じく娘を失った過去を持つジェレミー・レナー演じるハンターがその無念を晴らすべく犯人を追い詰めていく。

終始重苦しい空気が漂い娯楽性とは無縁な作品ですが、終盤は西部劇さながらのアクション的な見せ場が用意され、死刑になるべき人間が裁かれない現実と違い生きる価値の無い鬼畜生にきちんと罰が下されるので、こういう作風でありながら思いのほか後味は悪くありませんでした。