『グラスホッパー』や『ゴールデンスランバー』などで知られる伊坂幸太郎さんの原作を、『ジョン・ウィック』(共同監督)『アトミック・ブロンド』『デッドプール2』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』のデヴィッド・リーチ監督が、言わずと知れたブラッド・ピットを主演に迎え実写化した『ブレット・トレイン』。
私の記憶が正しければ日本の小説をこれだけのビッグネームで映像化したのは桜坂洋さんの『オール・ユー・ニード・イズ・キル』以来ではないだろうか?。
物語はブラピ演じる運の悪い殺し屋が東京発京都行の新幹線の中からブリーフケースを盗み出す簡単な仕事を請け負うも、乗り合わせた「同業者」たちと鉢合わせし事態は思い掛けない方向へ加速していく…というもの。
第一報やキャスティングを聞いて「海外が舞台になるんだろうなぁ~」と思っていたら、まさかの日本でひっくり返ったのは私だけではないはず。
曰く「定時に目的地に到着する鉄道は日本以外あり得ないから」だそうだが、どこまで本気なのか怪しいところ。
無駄に豪華なキャスティングによる「暗殺者がいっぱい」な展開はジョー・カーナハンの『スモーキン・エース』を想起するが、『パルプ・フィクション』な殺し屋コンビや、トンデモ日本描写は『キル・ビル vol.1』のそれでタランティーノ・リスペクトがかなり強い。
こういう時勢で日本ロケが行えずそれ故に開き直ったサイケなJAPAN観は意図的に盛られている事が明白で、よほどの情弱でなければ外国人もネタでやっていると分かるレベル。
全体像はヘンテコなのに小物は妙にリアルだったりして、そういう細かな「間違い探し」を楽しめるのは日本人だけの特権だし、クライマックスの選曲でぶったまげられるのもまた日本人だけの旨みだと断言できる。
主要キャストはもとより『ザ・ロストシティ』のお返しとばかりにサンドラ・ブロックだけでなく「相方」までカメオ出演したかと思えば、『デッドプール2』のスーパーラッキーウーマンことザジー・ビーツと共にまさかの「俺ちゃん」まで降臨し、それらを惜しげもなく使い捨てる堤幸彦作品的な悪乗りキャスティングのオンパレード。
これだけ友情主演盛り盛りなのに監督のお気に入りエディ・マーサンが居なかったのが不思議でしょうがないが、映画好きならそういうメタフィクション的な視点からもニヤリとさせられること請け合い。
海外のポリコレ勢は「日本が舞台なのに日本人俳優が少ない!!」などと余計なお世話で騒いでますが、これはそういう「寓話」なので目くじら立てず笑って楽しむのが正解です。