いまここにあるもの

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これはゲームか?。はたまた映画か?。『デス・ストランディング』完走。そして感想。(ネタバレ無し)

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発売から1週間も掛かってしまったが、ようやく『デス・ストランディング』のエンディングまでたどり着く事が出来ました。
この記事では敢えてネタバレを控え、作品の魅力を語りたいと思います。

発売前から感じていましたが、これは自他共に認める映画オタクの小島秀夫監督がゲームというフィールドで撮り上げた「プレイする映画」である。
小島秀夫監督が「監督」と呼ばれるようになって久しいが、実在の俳優を起用し本作を作り上げた事で、そこに新たな意味が加わったように思う。

安部公房の短編「なわ」の1節を引用し、「他者を遠ざける"棒"」と「繋がりを作る"縄"」をテーマに現代社会に問いかける強烈なメッセージの数々。

差別・分断・個人主義の台頭。
人種や国家だけでなくSNS上での攻撃に到るまで今の社会は「棒」に支配されている。
ゲームもまた敵を倒す「棒」が古くからのメインストリームであるが、小島秀夫監督は今回あえて「縄」に重きを置き、プレイヤーに新しいゲーム体験を提供することで他者との繋がりの大切さを訴えかける。

そして来たる「絶滅」との対峙。
それは誰しも訪れる「死」という終わりに対し、どう向き合うかを意味しており、何かを残すことで「絶望」は「希望」に変わり、世界は未来へと繋がっていく。
メタルギアシリーズから一貫して描かれるテーマ性、ひいては小島秀夫監督の信念ともいうべき思想は本作にも確り受け継がれていた。

ゲームとしては端的に言えばオープンワールドで配達をするだけのゲームである。
「作業ゲー」と言われればそれまでだが、敵意を向けて来る相手でも殺すとゲームオーバー(正確には殺して死体を放置すると)になるもの本作のテーマに準じており徹底している。
操作ミスで無抵抗な相手を殴っただけでゲームオーバーになった時は心底驚かされた。
プレイすると分かるが、この作品は「優しさ」に満ち溢れている。
それは他のプレイヤーが設置したオブジェクト(要するにお助けアイテムみたいなもの)を使い窮地を脱したり、難関なルートを攻略するなど「オンライン」という要素をこういう形で活用したのは新機軸であり、これもまた作品のテーマに根差したものとなっている。

実在の俳優陣の起用はCGで作り上げるキャラクターと違い、監督の意図しない要素(細かな所作)が加わることで作品により深みを与えることに成功している。
クリスがタバコを吸うようになったのは製作途中でマッツ・ミケルセンがタバコを吸う姿に監督が惚れ込んだからというライブ感を含め実写的であり、プレイしている方も不思議な感覚に浸ることが出来た。
例によって終盤はムービーパートが多くなるが、それこそ映画を観る感覚でゲームとは頭を切り替えて楽しむ事が出来て少なくとも私は不満を感じなかった。
その辺り実在する俳優を使った大きなメリットではないだろうか?。

悪に堕ちたコナミと、同じ題材を続ける事で足枷となりつつあったメタルギアという呪縛を取り払い、ゼロから「人と人の繋がり」によって小島監督が作り上げた『デス・ストランディング』。
本作のテーマやメッセージを「説教臭い」とか「理想論だ」と批判する人もいるだろうが、実際にゼロからスタートしこれだけの作品を創り上げたのは他ならぬ「繋がりの力」そのものであり、それを否定する事は誰にも出来ないし、これ以上の実例はないだろう。

気は早いが小島秀夫監督、ひいてはコジマプロダクションが作る次回作がいちゲームファンとして楽しみで仕方ない。
『P.T.(サイレントヒルズ)』のリベンジでホラー作品というのも良いし、同じく続編の企画が潰された『Z.O.E』のようなロボットアクションもまたやってみたい。
無論、まったく新しいジャンルでもいいし、独立したことでより自由に縛られることなく面白い作品を創り続けて頂きたいと強く思う。

最後に『デス・ストランディング』はやる価値のある作品である。
ファンであれば随所に小島秀夫監督「らしさ」を感じ、セルフパロディの数々にニヤリとさせられるし、普段ゲームをやらない映画ファンはノーマン・リーダスマッツ・ミケルセン、レア・セドゥやリンゼイ・ワグナーの夢の共演に胸が熱くなること請け合い。
時代柄「プレイ動画でいいや」という向きもあるだろうが、ノーマンを動かし、重い荷物を運ばせ、シャワーを覗いたり立ちションをさせる楽しみ?は自分でやってこそなので「映画沼モード」(監督談)こと「ベリーイージーモード」で頑張ってみることを強くお勧めします。