『エクスマキナ』『アナイアレイション』といった一風変わったSF作品に定評のあるアレックス・ガーランド監督の最新作にして洋画不振の日本でもサプライズヒットを記録した『シビル・ウォー』が早くもプライムビデオに加わったので鑑賞。
解り易く言えば「超ダークでシリアスな米国版『飛んで埼玉』」であり、「怪獣の代わりに内戦によって我が国はどうなってしまうのか?とシミュレートした米国人にとっての『シン・ゴジラ』」といったところ。
テキサス州とカリフォルニア州が手を組むという設定の妙や、ミズーリ州が「証拠を示せの州」と呼ばれる意味など、劇中で描かれる分断や差別を含め外国人にはイマイチピンと来ないのだが、それでも私はグイグイ引き込まれた。
予告などでは戦争映画のイメージを全面に押し出しているが、むしろジャーナリストに焦点を当てたロードムービーであり、キルステン・ダンスト演じるベテラン戦場カメラマンと、ケイリー・スピーニー演じる新米の師弟の物語でもある。
デジタル感の強い彩度高めの映像の中に挿入されるモノクロ写真や、戦闘によって荒廃した街と無関心を装い平穏を保つ町など、さまざまな「対比」が象徴的であり、記者という肩書故に傍観者だった主人公たちがワイワイやった直後に「どういうアメリカ人だ?」と尋ねる赤サングラスとの遭遇で一気に地獄に叩き落されるのもまた強烈な「対比」となっている。
中東でテロ組織に対して行うような殲滅戦をホワイトハウスで遂行するクライマックスの風刺も凄まじく、賛否ありそうな主人公の行動も名声を得ると同時に業を背負う戦場カメラマンのリアルなのだと解釈出来て個人的には唸らされた。