稀代のデザイナーとして国内外に多くのファンを持つ永野護さんが原作・監督・脚本・絵コンテ・レイアウト・原画・全デザインを手掛け、少数制作にも拘わらずハリウッド基準の音響と12Kとも言われる映像美によって、未だにソフト化がされていない伝説の作品『花の詩女 ゴティックメード』。
初公開時は気になりつつも観に行けず、この度10周年記念のリバイバル上映でようやく鑑賞することができました。
壮大過ぎる『ファイブスター物語』の1エピソードかつ、総尺70分という時間的な制約もあって、一見さんお断りなファンムービーなのかと思いきや、ボーイミーツガールなロードムービーとして予備知識が無くても楽しめる作りになっていたのは意外。
平和を愛する巫女の少女と、戦うことに誇りを持つ帝国の皇子。
価値観の違いから反目し合う2人が旅の中で次第に心を通わせていくのはお約束だが微笑ましく、成長物語としても申し分ない。
ハイライトの戦闘シーンは限定的でともすれば地味なのだが、そのビジュアルや機動音を含む音の表現などは唯一無二の魅力を放っている。
大衆に向けて作られた作品ではないので絵柄を含め好き嫌いは分かれるだろうが、全てのシーンに永野護さんの拘りが詰まったファンでなくても圧倒される一作でした。