いまここにあるもの

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『竜とそばかすの姫』(2021年) -★☆☆☆☆- (ネタバレ含む)

本来なら『金ロー』で放送しアマプラ配信という流れだったのが特番で飛んで配信が先になった『竜とそばかすの姫』を観る。
ポスト宮崎駿と目されるも、ここ最近の執拗な家族ネタが全く響かず倦厭していた細田守監督が久し振りにエンタメに回帰してくれたようで密かに期待しておりました。

題材やミュージカル要素など、深読みしなくてもこれは細田守版『美女と野獣』。
過去の物語の再解釈という点は『時をかける少女』だし、「仮想世界」が主な舞台になっているのも『デジモン』『サマーウォーズ』の流れで監督の得意分野と言える。

物語は過去のトラウマから酷く臆病になった少女が仮想世界「U」で素姓を隠し世界的な歌姫となり、そこで人々から忌み嫌われる「竜」と呼ばれる存在と出会い惹かれていくというお話。

バーチャルアイドルや素顔を隠した歌い手が活躍する現実の延長線上として設定に無理はないし、オーディションで抜擢された中村佳穂さんの歌声がとにかく素晴らしく「世界的歌姫」という部分もすんなり受け入れることができる。
ミュージカルシーンなど音楽周りの完成度が異常に高い反面、ドラマ作りは総じて雑で、登場人物の関係性も描き込み不足なら、終盤の展開はひたすら強引で作品の足を引っ張っていると言わざるを得ない。

ネットに強い友人が居て、映像で虐待の証拠があるにも拘わらず、それを児童相談所に報告もせず、「私が助けに行かなきゃ!」で数百キロ離れた地まで学生が単身向かう事を大人全員が良しとするのはいくら何でも無理がある。

何より腑に落ちないのが、ここまで散々描いてきた仮想世界「U」という舞台や、そこで生まれた繋がりが何の役にも立っていない事で、この辺り『サマーウォーズ』のクライマックスとは天と地ほどの差がある。
ネットではなく現実の繋がり、アバターではなく直接顔を合わせる事が大切と言いたいのかもしれないが、であればどうしてここで今までずっと避けていた父親に全て打ち明け協力を仰ぐという流れにしなかったのか?。
そうした方が家族の再生ドラマも描けて、よりエモーショナルになったのではないか?。

ラストは亡き母親と同じ選択を迫られその想いを理解した風に纏めていたが、それが危険を冒して良い理由にはならないし、向こう見ずな行動を含め私は最後まで共感できなかった…。