晴れて「100億の男」となり、先頃行われた「コミコン」で『シン・仮面ライダー』以降も実写作品を手掛けたいと意気込みを語っていた庵野秀明監督が2000年に発表した『式日』がアマプラで配信中なので再観。
『旧劇場版』は本作で補完されるというくらい、庵野さんの自伝的要素を含んだ作品なのですが、同じく庵野さん自身の事柄が強く反映された『シン・エヴァ』を踏まえて観ると多くの再発見があって面白い。
特に『シン・エヴァ』ラストの宇部新川駅周辺の空撮カットには存在しない建物がCGで加えられているのだが、 何を隠そうそれが『式日』でヒロインが住んでいる、既に取り壊された「太陽家具」の建物だというのが興味深い。
#シンエヴァ
— (株)カラー 2号機 (@khara_inc2) 2021年7月20日
【制作こぼれ話】
ラストカットのCGIに関する#庵野秀明 総監督リテイク指示と、太陽家具周辺のチェック用CGモデル。
宇部新川駅向けの指示は、コロナ禍によるリモートワークへの移行により、総監督からの修正指示がiPadによるデジタル指示に慣れ始めた頃のもの。 pic.twitter.com/fAMLZ29AWt
ぶっちゃけ現地の人以外気付かない変更点だし、多くの時間とお金を掛けてコレを加える事に何の意味があるのか凡人には理解できないが、『シン・エヴァ』はスタッフを含め「好きな物」を詰め込んだ「私は好きにした」作品なのでそういう事自体野暮なのだろう。
『式日』の原作は『平成ガメラシリーズ』で知られる藤谷文子さんの小説で彼女は同時にエキセントリックなヒロインを演じ、もう1人の主人公であるカントク役には本業監督の岩井俊二さんが抜擢され不可思議なアンサンブルを奏でている。
庵野さん自信が儲からないと断言し製作を渋ったくらい作家性の強いアート作品なのだが、カメラワークなどは『シン・ゴジラ』以上に『エヴァ』なので観ていて飽きないし、前記の通り『シン・エヴァ』に通じる要素が散見するので「はっ」とさせられること請け合い。
カントクの語る言葉は庵野さんの言葉であり、それは『シン・エヴァ』のゲンドウの独白にも言える事だし、前記のラストシーンに対する拘りなど実は『シン・エヴァ』は『式日』の事も総括しているのではと感じさせ、むしろそうであった方が箱根ではなく宇部がラストシーンに選ばれた事も納得できる。
映像作家庵野秀明濃度120%で娯楽性とは程遠い作品なのだが、8月の『シン・エヴァ』配信までの予習という意味で未見の人はチェックしてみると新たな発見ができるかもしれません。