いまここにあるもの

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『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』(2021年) [軽微なネタバレ含む]

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covid-19による延期があったとは言え前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』から9年振りに公開された続編にしてシリーズ完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』。

先行上映されたアバンの戦闘を経て、荒廃し切った終末世界から命の輝きに満ちた暖かな世界への舞台転換は驚きを禁じ得ないし、どんなに辛い状況でも逞しく生きる人々の姿は、あの震災の光景を想起せざるを得ません。

空白の14年間に起きた出来事や積み重なった想いを散りばめながら「縁」に導かれた少年と少女が、自分の存在意義や成すべき事と向き合い、成長していく人間ドラマはそれらの繋がりを拒絶した「旧世紀版」では得る事の無かった福音を奏でる。

そして恒例となった肉体的にも精神的にも酷使されるアスカと2号機が大立ち回りを演じる物量で殴り付ける怒涛の総力戦からなだれ込む「その先」はタイトルにある繰り返し記号が意味する通り既視感を伴なうシリーズの総括編。

意図的に演出したであろう強烈な違和感でリバイバルする「あの衝撃」と共に、自分の犯した罪や、嫌悪する父親と向き合った少年が「TV版」や「旧劇場版」で出せなかった答えを提示していく様は「綾波を返せ!」と同じく、過去作に思い入れの強い人ほど心に来る物があります。

「ここまでやるか!」と思わずにはいられないTV版ラスト2話の技法的再現までして至る終結は「声変わり」を含めまだ咀嚼しきれていないのですが、これまでの「エヴァ」の定説を否定する事で登場人物を「エヴァの呪縛」=「ループ」から解き放つというのは実に象徴的で、これは同時に我々ファンに向けたメッセージでもあるのでしょう。

エヴァらしさを脱却し新たなエヴァへとリビルドされた本作はまさに「シン・エヴァンゲリオン」と呼ぶに相応しい作品でした。